福利厚生として使える3種類の退職金とは?メリットや注意点を解説
2024.07.29 福利厚生

目次
中小企業経営者として、退職金制度を導入すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
一般企業の中には、福利厚生の一環として独自の退職金制度を導入している企業もあります。一方で、一度に支給する金額が大きいため、会社の経営状況に大きく影響を与える可能性もあります。
本記事では、会社の福利厚生として退職金を導入するメリットや注意点、退職金の原資確保に使える手段について解説します。
福利厚生として退職金制度を導入するメリット3つ
会社に退職金制度を導入するメリットは、以下の3つです。
- 従業員のモチベーション向上
- 離職率低下と採用力の強化
- 企業イメージの向上
ひとつずつ解説します。
1. 従業員のモチベーション向上
会社で退職金制度を導入するメリットのひとつとして、従業員のモチベーション向上が挙げられます。
退職金制度がある会社は、その会社内での給与が退職金の金額にも大きく影響します。将来もらえる可能性がある退職金の金額次第で、会社内での出世を考えるきっかけになる可能性もあるため、従業員のモチベーション向上に期待できるでしょう。
2. 離職率低下と採用力の強化
退職金制度を導入することで、離職率の低下にもつながります。
退職金制度は勤続年数が長いほど受け取れる金額が大きくなります。そのため、少しでも多くの退職金を受け取ることを目的に、少しでも長く勤務しようと考える従業員が出てくるでしょう。
また、退職金制度は採用力の強化にもつながります。転職しようと考えている人の中には、老後生活に不安を抱えている人もいます。そんな方にとって、独自の退職金制度を導入している会社は、良い印象を持たれやすいはずです。
以上の理由から、会社独自の退職金制度は人材確保において高い効果を期待できます。人材不足に困っている会社は、退職金制度の導入を検討してもよいでしょう。
3. 企業イメージの向上
会社独自の退職金制度を導入することで、企業イメージ向上が期待できます。退職金制度がある会社は、従業員への細やかな配慮ができている会社という印象を周囲に持たせられます。
企業のブランドイメージは、顧客の獲得や従業員の採用において重要なポイントです。しかし、それ以外にも、銀行や投資家などのステークホルダーに良い印象を持ってもらえる可能性もあります。
企業にとって重要なブランドイメージを向上させられる点も、退職金制度を導入する大きなメリットのひとつです。
福利厚生として退職金制度を導入する際の注意点2つ
福利厚生として退職金を導入する場合、途中で簡単に制度を廃止できない点や、タイミングによっては経営状況に大きな影響を与える点には注意が必要です。ここでは、福利厚生として退職金制度を導入する際の注意点を解説します。
1. 廃止するのが難しい
退職金制度を始めた場合、その後業績不振に陥ったり不況に襲われたりしたとしても、退職金制度を取りやめるのは困難です。
会社の都合で退職金制度を廃止する場合、まず従業員や労働組合の承諾を得るというプロセスが必要になります。仮に承諾を得られたとしても、従業員のモチベーション低下につながり、生産性の下落や離職率の増加へとつながりかねません。
退職金制度を導入する際には、さまざまなリスクも見越して、計画的に導入することが大切です。
2. 経営に大きな影響を与える可能性がある
退職金は一度に支払う金額が大きいという特徴から、支払いタイミングによっては経営に大きな打撃を与えることが考えられます。さらに、どれだけ会社の業績が悪化していたとしても、条件を満たす退職者がいる限りは必ず支払わなければいけません。
退職金制度を導入する場合には、会社として毎月の積立を行い、経営に必要な資産と切り分けて原資を確保しておくことが大切です。
企業が福利厚生で退職金を用意する方法3つ
企業が福利厚生制度を導入する場合に、その原資を確保するために活用できるものが3つあります。
企業が退職金を用意する方法 | |
法人保険 | 逓増定期保険、長期平準定期保険、養老保険など |
企業年金制度 | DB(確定給付企業年金)、企業型DC(企業型確定拠出年金)など |
共済型 | 中小企業退職金共済、特定退職金共済、小規模企業共済など |
自社に適した方法を取り入れられるように、ひとつずつ押さえておきましょう。
1. 法人保険
企業が福利厚生として退職金制度を導入する場合、法人保険を活用する方法があります。法人保険とは、会社が保険者となり、経営者や従業員が被保険者となる生命保険や損害保険のことです。
貯蓄性の高い保険商品であれば、退職金の原資を積み立てる有効な方法となるでしょう。対象者によって適切な保険商品が異なります。
対象 | 有効な保険 | 概要 |
従業員 | 養老保険 | 死亡保険金と同額の満期解約金が受け取れる保険 |
役員・経営者 | 逓増定期保険 | 年数に応じて保険金が増額する保険 |
長期平準定期保険 | 満期が95~100歳と、満期になるまでの期間が長い定期保険 |
法人保険を活用する際は、まずは想定する支払い対象者を決めたうえで保険商品を選びましょう。
2. 企業年金制度
企業の退職金として、国の年金制度で活用できるものもあります。代表的な事例としては、DB(確定給付企業年金)や企業型DC(確定拠出年金)などがあります。
確定給企業年金は企業が従業員と給付の内容を約束し、高齢期を迎えた従業員がその内容に基づいた給付を受け取れる確定給付型の企業年金制度です。受け取り可能期間は60~65歳までの間と決められています。国の年金制度である仕様上、厚生労働大臣の認可・承認が必要となります。
一方の企業型DCとは、企業と個人で半分ずつ掛金を拠出して、個人の運用指図による運用収益との合計額が給付額となる企業年金制度です。確定給付年金と異なり、将来的に給付される金額は運用利益によって左右されることが大きな特徴です。企業型DCも60歳以降にしか受け取れないと決められています。
3. 共済型
共済型の退職金制度も、退職金を導入するにあたって活用できないか検討してみるとよいでしょう。主な制度として、以下の3種類が挙げられます。
- 中小企業退職金共済(中退共)
- 特定退職金共済
- 小規模企業共済
上記のうち、中退共と特定退職金共済が従業員の退職金制度に活用できます。しかし、いずれも全従業員の同意がなければ加入できないため、簡単に導入できない点は理解しておきましょう。
一方の小規模企業共済は、経営者層を対象とした年金制度です。会社名義ではなく個人として加入する制度なので、企業としてのメリットはあまりないと言えます。
福利厚生で退職金制度を設ける際は計画的に用意することが大切
会社が独自に退職金制度を導入するメリットとして、従業員のモチベーション向上や人材確保、企業イメージの向上などが挙げられます。
しかし、退職金を支給するタイミングによっては、会社の経営状況に大きな影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。
退職金の原資を確保する手段として、企業年金や共済などが挙げられますが、それぞれ受け取れる年齢制限や加入条件が厳しい点は把握しておきましょう。
その一方で、法人保険は多くの会社が導入しやすく、要望に合わせて自由に保険商品を選べる点が特徴です。退職金制度を新たに導入したい場合は、まず法人保険の専門家へ相談するのもよいでしょう。

片岡 伸哉Shinya Kataoka
MDRT会員