中小企業の事業承継の課題とは?ポイントや手順を解説
2024.06.14 事業承継・相続
目次
中小企業の経営者が引退する際は、事業承継を行い後継者に引き継ぐ作業があります。
一方で、近年では少子高齢化による労働人口の減少により、後継者難による倒産件数は年々増加傾向が見られます。このような状況もあり、事業承継は社会問題のひとつと言っても過言ではありません。
しかし、中小企業が事業承継を進めるにあたってさまざまな課題があるので、思うように進まないのが実情です。
本記事では、中小企業が事業承継を進めるにあたって直面する課題について解説します。事業承継の手順や成功させるポイントなども説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
中小企業の事業承継における課題
事業承継において、多くの中小企業が抱えている課題は以下の3つです。
- 高齢化と後継者不足
- 経営者がM&Aについての理解が不足している
- 税負担が大きい
実態を把握するためにも、上記についてそれぞれ説明します。
高齢化と後継者不足
中小企業の経営者の高齢化が年々進んでいるにもかかわらず、後継者を決められていない状況にあります。
中小企業庁の調べによると、70歳以上の経営者の割合は2008年時点では33.6%であったのに対し、2017年には約半数にまで増加しているとのことです。そして、2025年には6割超にあたる245万人の経営者が70歳以上になると言われています。
また、70歳以上になる経営者のうち、約半数の127万人は後継者未定という調査結果もあります。これは日本企業全体の3分の1に相当し、約650万人の雇用が失われる可能性があるとされています。
【参考】
中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題|中小企業庁
少子高齢化が進むなか、事業承継の目処が立たずに廃業してしまう企業は増えていくと考えられます。
経営者がM&Aについての理解が不足している
事業承継をする相手は、必ずしも親族や従業員などの関係者である必要はありません。M&Aによる事業承継を行えば、第三者に企業を売却して事業の引き継ぎができます。
実際にM&Aの件数は増加傾向にあり、2018年には3,850件と過去最高を記録しています。一方で、中小企業・小規模事業者の6割以上の経営者が、M&Aに対してネガティブな印象を持っているという調査も無視できません。
このように、M&Aによる事業承継の理解が不足しているために、後継者を見つけられていない企業が多いことが伺えます。
税負担が大きい
事業承継を行うにあたって発生する税金が高いために、断念するという事例も少なくありません。実際に事業承継を行うと相続税や贈与税が発生し、金額によっては税率50%超になる場合もあるくらいです。
親族間であれば活用できる控除制度が多いので、ある程度の税負担は軽減できます。しかし、親族ではない社内の関係者やM&Aが承継先となる場合は、利用できる控除制度が限られるため、税負担が大きくなってしまいます。
譲渡企業が計画的に資金を用意しておかないと、事業承継をスムーズに進めるのは難しくなるでしょう。
中小企業の事業承継の手順
中小企業の事業承継の手順を簡単に説明すると、以下のとおりです。
- 経営状況や課題などの現状把握
- 承継方法の確定
- 事業承継計画の策定と実行
進め方について詳しくは別記事にて解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
中小企業の事業承継を成功させるポイント4つ
中小企業の事業承継を成功させるために押さえるべきポイントは、以下の4つです。
- 資金対策を行う
- 後継者選定に早めに着手する
- 関係者の理解を得る
- 承継前の緊急時に備える
スムーズに事業承継を進めるために、ひとつずつ見ておきましょう。
1.資金対策を行う
事業承継を行うと税金をはじめとした、あらゆるコストが発生するため、あらかじめ資金の準備をしておく必要があります。コストを負担するのは名目上は後継者個人ですが、実際には引き継いだ会社の資金から支払うことになります。
そのため、スムーズに進めるためには会社側が資金対策を取らなければなりません。会社側が取れる資金対策は、主に以下の3つです。
- 事業承継税制の活用
- 補助金・助成金の活用
- 法人保険の活用
まずは、補助金・助成金でどれだけ賄えるか確認してみてください。すぐに資金を用意するのが難しいようであれば、事業承継税制を活用すると贈与税や相続税の納税の猶予を受けられます。その間に、資金を準備しましょう。
事業承継を行うのが数年以上先であれば、法人保険を活用するのも効果的です。
2.後継者選定に早めに着手する
中小企業の事業承継が進まない大きな原因のひとつが、後継者がいないもしくは決まらないことです。そのため、事業承継をスムーズに進めるために早めに後継者選定に着手しましょう。
とくに中小企業の場合、大手企業と違って後継者の候補となりえる人材が少ないので、時間がかかる傾向にあります。事業承継を考え始めたら、まずは身内もしくは社内に適任となる後継者がいないか、探してみてください。
3.関係者の理解を得る
事業承継をトラブルなく終えるために、後継者や従業員、取引先などの関係者から理解を得る必要があります。
とくに親族内承継の場合は資金の準備に加えて、後継者以外の親族の理解を得る必要があり、怠ってしまうと後々トラブルに発展する可能性が高いです。また、従業員や取引先にもあらかじめ共有しておかないと、今後の業務や取引に悪影響を及ぼします。
準備を進めながら、事業承継をする旨を各所に都度伝えるようにしましょう。
4.承継前の緊急時に備える
入念に事業承継の準備を進めていても、その前に予期せぬ事故や病気、災害などの緊急事態に巻き込まれる可能性もあります。もし巻き込まれた場合、その状況に対応しながら承継を進めなければいけません。
その際、急にまとまった現金が必要になり、後継者に苦労をかける可能性があります。そのため、緊急時にも備えた資金対策をしておくと安心です。理想的な形としては法人保険を契約しておき、緊急時に使える資金を別途確保しておくことです。
事業承継の準備をする際は、予期せぬ事態になることを前提に余裕を持って資金を用意しましょう。
ポイントを理解してスムーズに中小企業の事業承継を進めよう
少子高齢化やM&Aに対する理解不足などにより、中小企業を中心に後継者難による倒産件数が増加しています。しかし、今まで想いを込めて運営してきた企業が倒産してしまうと取引先に迷惑がかかり、また従業員が雇用を失うという問題が発生します。
後継者不足による倒産という事態を防ぐためには、できるだけ早めに後継者候補を見つけることが大切です。
事業承継を進めるにあたって大きな課題のひとつが資金面です。法人保険であれば事業承継時の資金対策となりうるので、ぜひ検討してみてください。どの法人保険が向いているのかわからない方は、保険の専門家に相談してみることをおすすめします。

片岡 伸哉Shinya Kataoka
MDRT会員