社員の定着率を上げる方法とは?原因と3つの対策法について解説
2024.07.29 福利厚生

目次
会社を経営するうえで、従業員の確保は重要な問題です。従業員の状況を判断する際に、重要な指標となる数値のひとつが定着率です。定着率がよければ従業員にとって働きやすいと言え、対照的に悪ければ職場環境に何かしらの問題があると言えます。
本記事では、従業員の定着率が下がる原因と改善するための対策について解説します。働きやすい環境を実現すれば定着率の向上につながる可能性があるので、ぜひ参考にしてみてください。
従業員の定着率とは?求め方と日本の現状を解説
従業員の定着率とは、企業に入社した従業員のうち、一定期間後にどれだけ働き続けているかを示す指標です。
定着率が高ければ、多くの従業員が長期に渡って働き続けていることを示しており、職場環境が良好であると判断できます。
一方、定着率が低い場合は多くの従業員が離職していることを示し、管理体制などに何らかの問題があることが伺えます。定着率は、自社の職場環境を把握するうえで重要な指標のひとつであるため、定期的に数値を把握しておくことが大切です。
定着率の計算方法
定着率を計算する際は一定期間の入社人数と退職人数を元に、以下2つの計算式で算出します。
定着率=(入社人数−退職人数)÷入社人数×100
定着率=100%-離職率
入社人数と退職人数を元に計算したほうが正確な値を出せます。しかし、離職率をすでに出している場合は100から差し引きするだけでも算出が可能です。
実際に、入社人数と退職人数による計算式で算出してみましょう。1年間で入社した人数が20名で、そのうち5名が退職したとした場合の計算式は、以下のようになります。
(入社人数20名−退職人数5名)÷入社人数20名×100=定着率75%
自社の状況を把握するために、ぜひ計算してみてください。
日本の平均定着率は約85%
厚生労働省では、定期的に雇用動向調査を実施しています。この調査結果を確認することで、全国の平均定着率も確認できます。
厚生労働省が公開している「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、令和4年の平均離職率は15%でした。つまり、このデータから、日本の一般的な企業の平均定着率は約85%だと言えます。
ただし、この数値は業種や地域を問わずにランダムで統計した結果です。各企業の事情によって適切な定着率は異なるため、全国の平均値が参考にならない可能性もあります。この平均値をどう捉えるかは難しいところですが、ひとつの目安として考えておいてもよいでしょう。
定着率が低下する原因3つ
企業の定着率が低下してしまう原因として、大きく3つのことが想定されます。3つの原因とは、人事評価が曖昧なことと福利厚生が不十分であること、労働環境が悪いことです。ここでは、定着率が低下する3つの原因について詳しく解説します。
1. 人事評価基準が曖昧
定着率が低下してしまう原因のひとつとして、人事評価基準の曖昧さが挙げられます。
人事評価基準が曖昧な場合、会社からの評価に不満を感じた従業員が自分を高く評価してくれる環境を求めて離職していくことが考えられます。
一方、第三者が見てもわかるような評価基準が会社内で共有されていれば、たとえ低評価だったとしても納得してもらいやすくなるでしょう。
しかし、どうしても従業員の業務範囲が広くなってしまう小規模な会社では、人事評価の基準を明確に決められない場合もあります。とくに、小規模な事業所や起業したばかりの会社では、人事評価をめぐるトラブルが発生しやすいため注意しましょう。
2. 福利厚生が不十分
定着率が下がる原因として、福利厚生が不十分であることも挙げられます。
従業員が「長く勤めたい」と考える職場は、働いていて安心できる職場です。もし、勤務先の福利厚生が不十分であれば、従業員は将来に向けて不安を抱えることになります。定着率が低いと感じた場合、まずは以下の観点で職場環境を見てみてください。
- 職員が有給休暇を取りづらい
- 残業や通勤などの手当が不十分
- 育児休暇などを取得しづらい
従業員は、勤務先を選ぶ際に福利厚生も重視しています。今勤めている会社の福利厚生が不十分だと判断されれば、福利厚生がより手厚い会社を求めて離職することも考えられます。
3. 労働環境が悪い
職場の労働環境が悪いことも、従業員の定着率が低下する原因のひとつです。労働環境が悪いと従業員がストレスを感じ、より良い会社へと転職してしまいます。
労働環境が悪い職場の例は、以下のとおりです。
- パワハラ・セクハラが横行している
- 安全管理が杜撰である
- 休憩室が狭い
- オフィスが清掃されていない
従業員の定着率が低下する背景には労働環境が大きく関与していることも、理解しておきましょう。
定着率を上げる方法3つ
従業員の定着率が低い場合、原因に応じた対策をすることが大切です。定着率を上げる対策として、人事評価制度の整備や労働環境の改善、福利厚生の強化などが挙げられます。ここでは、職員の定着率を上げるために有効な3つの方法について解説します。
1. 人事評価制度を整備する
人事評価制度を整備して会社内で共有できれば従業員のモチベーションが上がり、定着率の向上につながります。
また、人事評価制度と合わせてキャリアパスの整備も重要です。キャリアパスとは、企業内におけるキャリアアップのために必要な過程や道筋を示すものです。
自分が適切に評価されている、と感じられれば従業員も納得して働けるようになり、結果的に定着率の向上につながるでしょう。
2. 労働環境を改善する
定着率を向上させるには、労働環境の改善も重要です。労働環境が改善することで従業員が働きやすくなり、離職者数を減らせます。
まずは、どこに問題があるのかを洗い出すことが大切です。ときには、従業員にアンケートを取って聞いてみるのもよいでしょう。
洗い出した問題点に対して、それぞれ対策を打ち出してみてください。必要に応じてツールを取り入れていけば、着実に労働環境は改善していくでしょう。
労働環境の改善を促せるツールの例
- メンタルヘルス不調
⇒メンタルヘルスアプリ - 人事評価の実施
⇒人事評価システム - 社内のコミュニケーション改善
⇒コラボレーションツール など
3. 福利厚生を充実させる
会社の予算に無理のない範囲で、福利厚生を充実させることも着手してみてください。従業員への福利厚生が充実すれば、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。
従業員のモチベーションも上がりやすい福利厚生には、以下のようなものがあります。
- 育児休暇などの休暇制度が充実している
- 家賃や通勤などに手厚い手当をつけてくれている
- 保険や退職金積立など
とくに、保険や退職金積立などは会社にとってもメリットが大きいため、多くの会社で導入しやすい福利厚生のひとつです。
福利厚生を見直して定着率を向上させましょう
定着率とは、一定期間内で入社した人のうち何名が退職せずに残っていたかを示す指標です。定着率の高い会社は従業員が働きやすいことを示しており、会社の雇用状況を確認する重要な指標でもあります。
定着率を改善するためには、人事評価制度の整備や労働環境の改善などが有効です。とくに、福利厚生を充実させることは従業員のモチベーション向上につながり、結果的に会社の定着率にも影響を及ぼします。
福利厚生を新たに取り入れるのであれば、法人保険の契約を検討してみてください。従業員はもちろん、経営者の保障を充実させるメリットもあります。
ただし、法人保険は通常の保険とは異なる点も多いため、加入する際には注意が必要です。実際に法人保険料を検討する際には、法人保険に詳しい専門家へ相談するとよいでしょう。

片岡 伸哉Shinya Kataoka
MDRT会員